本研究の目的は、助産師学生の分娩介助を重ねる経験が助産師としてのアイデンティティ形成にどのような影響があるかの基礎資料を得ることである。A 大学助産師養成課程の学生12 名を対象とし、分娩介助実習前、中間(5 事例終了後)、実習後(9 または10 事例終了後)の合計3 回「助産師の職業的アイデンティティ尺度」(5 因子,26 項目,7 件法)による縦断的調査を実施した。結果として、「助産師の職業的アイデンティティ尺度」5 因子の実習前の平均値は、第1 因子(7 項目)「助産師として必要とされることの自負」29.2/49 点、第2 因子(6 項目)「自己の助産師感の確立」34.6/42 点、第3 因子(4 項目)「助産師選択への自信」19.3/28 点、第4 因子(6 項目)「助産師の専門性への自負」20.6/42 点、第5 因子(3 項目)「助産師としての社会貢献への志向」16.1/21 点であった。分娩介助の経験件数を重ねることによる影響として、第2 因子「自己の助産師感の確立」において有意に低下した。下位項目では「私は助産師として、対象者に貢献していきたい」「私は助産師として対象者の願いにこたえたいと思っている」の2 項目において有意に低下した。本研究で分娩介助実習の経験を重ねることで得点が低下していることは、様々な自己の課題が明確になることによって学生の自己効力感が低下し、助産師としてのアイデンティティ形成に揺らぎを生じさせる可能性もあり、教育的な課題として示唆された。したがって助産師学生の職業的アイデンティティ形成に分娩介助経験の影響は強く、分娩介助経過を考慮した具体的な教育的な支援方法の確立が必要であることが明らかになった。
分娩介助実習
職業的アイデンティティ
縦断的調査
clinical practice on the conduct of labor
occupational identity
prospective study