本論文の目的は、山口県の統計データを用いて、これまでの山口県の教育に関する政策が人的資本の蓄積に果たしてきた効果について導出し、現行の政策に対して目に見える形で提案を行うことである。教育を経済成長のエンジンとして捉えた一般均衡型世代重複シミュレーションモデルを構築し分析を行う。このシミュレーションモデルを用いることにより、実験を行うことが難しい状況において、コンピュータ上に多数の世代が存在する仮想的経済を作り出し、数値解析が可能となる。主な結論は、山口県在住者への入学金や授業料の減額などの教育補助を強化することにより、個人が山口県内で投資する教育時間が常に増加する。その結果、山口県における人的資本蓄積が促進され、就学後県外への流出が少なければ、より高い経済成長が達成され、他地域との地域格差が縮小する。教育補助が増加すると、財政投入が増加するだけではなく、個人の教育投資も増えるため自ずと貯蓄が減少せざるを得ない。しかしながら、教育による人的資本の蓄積効果は、公債水準をも減少させる効果があるため、経済は成長する。