20世紀初頭、ルソーやペスタロッチなどによって、世界的な新教育運動として一般化した児童中心主義は「子どもから」の教育思潮を生みだした。音楽教育についても、その影響を受け、リトミック教育法を創始したスイスのダルクローズ(Dalcroze.E.J.1865-1950)、「子どものための音楽」を提唱したドイツのオルフ(Orff,Carl.1895-1982)、「母国語による唱歌教育」を提唱したハンガリーのコダーイ(Kodály Zoltán.1882-1967)などがいる。なかでも、ダルクローズは子ども自身が所持するリズム性に教育法の源を見出し展開したとして著名である。彼の教育法は、オルフやコダーイ、後のシュタイナーあたりにまで影響を与え、今日ではあらゆる音楽教育の基礎教育としてそのアイディアや方法が用いられている。日本の教育への受容は、小林宗作(1893-1963)によってである。本稿では、彼の「綜合リズム教育」における子ども観や教育理念・目標、方法等を紹介しながら、彼の子どもへの観点やそれに基づく教育のあり方を紹介し、子どもと表現教育、特に音楽教育のあり方についてその基本的立場をまとめ、今後の音楽科教育のあり方を検討資料としたい。