子ども学の確立に向けての研究および教育に関して、比較行動学・心理学の立場から野生霊長類の行動および保全に関するフィールドワーク研究を行ってきた筆者自身の専門領域からどのような視点を提示できるか、貢献ができるのかについて考察した。子どもの人間らしい健全な心身の発達にかかわる保育・教育において、ヒトの身体や心が進化した狩猟採集民時代の進化適応環境としての自然がヒトの発達に与える影響について考慮することの必要性、地に足のついた自然に対する認識と価値観を形成するための自然の教育の重要性、その教育のための日本のサル学流のフィールドワークの有効性、フィールドワークの副産物として身につく力などについて論じた。