SDGsとも深く関係する生物多様性保全にかかわる保育・教育において、保全のための知識を伝達共有するだけでは不十分で、生命を尊重し環境を保全したいと感じる心情を育てることが課題となっている。本論文では、生命を尊重し環境を保全したいと感じる心情の根底にある自然観として、擬人的、アニミズム的と呼ばれている自然観をとりあげ、そのような自然観がどうしてヒトの心に備わったのかについて進化心理学的に考察した。加えて、幼児期から野外にでかけ身近な自然に直に触れて遊びこむことを繰り返す機会と経験を大人が与えること。人間が進化的適応の心の基本的なデザインとしてもっている擬人的な思考を、子どもが現実の自然と結びつけて作動させるように保育・教育すること。そうすれば、子どものなかに、生命を尊重し環境を保全したいと感じる心情がおのずと育っていくであろうこと。その上に「重ね描く」かたちで保全のための知識を与えてやれば自然な形で身についていくということについて論述した。