グローバル人材育成は,語学力強化や留学による異文化理解教育の枠組みで語られることが多い中,「障害」は文化集団の枠組みに含まれているにも関わらず,地域コミュニティの中で福祉的援助の対象者として不可視化されてきた。障害当事者による社会運動の中から生み出された「障害文化モデル」は,「多文化共生教育」との共通点を多く含み,新たな視点を提供する可能性を持つが,十分な学際的議論はなされていない。本稿では,多文化共生と障害文化モデルの接点,及びコミュニティにおける少数派集団と多数派集団間に起こる差別感情の課題を探求し,双方の複合的なアイデンティティ形成プロセスや学習の過程について考察することが目的である。障害文化に関する当事者活動の系譜および異文化接触援助に関する実践をレビューし,多文化共生教育との接点を見いだし論じてゆく。