ため池の水を抜いて外来種を駆除するテレビ番組に象徴されるように、近年、子どもたちへの外来種の伝え方の一般的な傾向として、外来種は悪いもので排除すべきものであり、在来種は良いもので保護すべきものというイメージを、子どもたちが心の中につくりあげてしまうような形で伝えられてしまっているように見受けられる。しかしながら、外来種とは本来、人間の活動によってほかの地域から導入された生物であり、良い悪いとは関係がない。しかも、多くの日本人は、都市や街、郊外、農耕地周辺に住んでいて、身近に出会う自然は、多くの外来種がふくまれる人為的自然がほとんどである。本論文では、外来種に対するあつかいや価値観の曖昧さ、および転換しつつある欧米の自然保護のパラダイムという二つに論点を置きながら、いまや多種類の外来種が混在することで構成されている日本の身近な自然を、子どもたちにどう伝えればよいのかについて考察した。この課題は、生物多様性保全のための環境教育のあり方とも大きく関係していると考えている。