本研究は、学習者の主体化を目指した国語学習サイクルの効果を検証することを目的とする。国語学習サイクルは、学習課題となる問いの決定を学習者に委ね、省察を国語学習の中心としてサイクル的に展開する学習方法である。検証の指標として、学習内容の差異、問いの生成/関係づけ、学習成果物の評価、国語学習への意識や態度の4 つを設け、1 年間に及ぶ文学実践のデータをもとに考察を行っている。
結果としては、学習者に問いの決定を委ねても学習内容に差異は見られないこと、学習者は個々で生成した問いと全体の問いを関係づけながら読んでいること、国語学習サイクルによる学習においても国語学力の保障は可能であること、学習者の学習への自律的参加や方略意識が高まることを明らかにしている。課題としては、国語学習サイクルの検証範囲を広げることとともに、国語学習サイクルによる学習で生じる教師の不安や葛藤に着眼し、教師の出や待ち(鹿毛、2019:18)や教師の役割を再考することを挙げている。