The Jew of Maltaに登場するBarabasが語る言葉は辛辣である。特に彼がクリスチャンに向ける軽蔑の眼差しと非情な言葉の数々は、不快感を通り越して笑いを誘う要素とさえなっている。本作にBarabas に負けず劣らず卑怯で残酷な人物が次々と登場するのだが、その代表格Ferneze はクリスチャンである。当時の英国における演劇統制を考慮するなら、本作が上演されたこと自体が驚くべきことだが、本稿はその理由をMarlowe作品そのものから見出すことを試みる。醜い争いの陰で大きな影響力を持つ善と悪の力に注目し、本作の魅力に迫りたいと思う。