『トム・ジョウンズ』は愛と結婚の書だと言っても過言ではない。愛と結婚が出来事として語られるだけではなく,作者や登場人物達によって大いに論じられるのである。また、男女の愛は単に異性愛としてだけではなく,同胞愛と密接に絡めて論じられる。作品において同胞愛を実践する善人の典型は,地主オールワージーと,彼の用紙として育てられ,最後には彼の実の甥であることが判明する主人公トムである。反対に,自己愛しかなく,他者への愛を欠く人間がおり,その典型がオールワージーの妹ブリジェット(実はトムの母親)と結婚する(以下、略)