今日まで、日本の中世女性史の研究は多方面にわたり、成果を収めてきた。女性は「家」の中で如何なる存在であるか、そして、女性と政治、仏教にかかわる問題や、女性と婚姻など、ジェンダーの問題にも触れながら、さまざまな角度、方面から検討されてきた。本論文はこれまでの成果を踏まえて、中世女性史に欠かせない人物である北条政子と、その身近の各階層に生きる女性の姿を浮き彫りにしてみた。政子も普通の女性の一人として取り扱い、彼女の平凡と非凡を考察して、鎌倉幕府を創設した源頼朝の正妻としての政子の実像に迫ってみようと思う。