本研究では,保健体育科教員養成段階の教育実習生を対象に,教材内容についての知識が相互作用行動に及ぼす影響及び相互作用行動を妨げる要因について事例的に検討し,その内実を明らかにすることを目的とした。対象者は3名の教育実習生である。そのうち1名の教育実習生はバレーボール部に10年間所属しており,3年間のバレーボール指導経験をもっていた。対象授業は教育実習で展開されたネット型・バレーボールの授業であった。各教育実習生が授業中に発揮した相互作用行動の実態とそれを妨げる要因を検討するため,デジタルビデオカメラとピンマイクを用いて教育実習生の教授行為と発話内容を撮影・録音し,授業直後にインタビューを実施した。これらのデータを分析した結果,以下の示唆が得られた。まず,教材内容の種目経験が少なく,それに関わる教材内容についての知識が乏しい教育実習生に比べ,経験,教材内容についての知識ともに豊富に有する教育実習生は①頻繁な相互作用行動を営むことができること,②生徒の運動技能改善に効果的とされる上位階層の運動技能に関するフィードバックを多く与えられることである。また,教育実習生の相互作用行動を妨げる要因として,①授業のマネジメント管理能力の乏しさ,②相互作用行動に対する生徒の希薄な反応,③教材内容についての知識や運動技能の不備の3点が挙げられた。