本研究の目的は,事象関連脳電位を指標とした有罪知識質問法は,実験協力者が犯罪関連情報を有していれば,彼らが実際に有罪か無罪かには関係なく,有罪として分類するという仮説を検討することであった。実験1では,模擬犯罪による有罪群に加え,2種類の無罪群を設定した。一方の無罪群は有罪群の模擬犯罪を目撃することによって犯罪関連情報を取得した。他方の無罪群には犯罪関連情報が一切与えられなかった。P300を検出指標として,犯罪関連情報を一切持たない無罪群は有罪群と弁別できたが,目撃者群は有罪群と弁別できなかった。実験2では,P300に加え,後期陽性電位を検出指標とし,さらに模擬犯罪による有罪群に加え,3種類の無罪群を設定した。そのうちのふたつの群は,模擬犯罪を目撃するか,犯罪内容を記した文書によって犯罪関連情報を取得した。もうひとつの無罪群には犯罪関連情報が一切与えられなかった。その結果,P300とLPPを検出指標として,犯罪関連情報を一切持たない無罪群は他の3群とは弁別できたが,犯罪関連情報を有する3群間の弁別はできなかった。これらの結果を総合すると,事象関連脳電位に基づいた有罪知識質問法は,例え無実であっても当該犯罪に関連する情報を有していれば,実際の犯罪者と区別できないということを示している。