本論文は、日本において1990年代から急速な発展を遂げ、特に2000年代以降に注目を浴びるようになったフェアトレード(公正な貿易)が取り扱う様々な商品のなかから、一般的に周知が進んでいるコーヒーに焦点を当て、日本のフェアトレード関連団体から見たコーヒーのサプライチェーンへの影響について検証を行ったものである。日本は世界第3位のコーヒー消費国でありながら、欧米に比べるとフェアトレードで流通する量が少ないという現状にある。経済構造に関する論文は多数あるが、フェアトレードを浸透させるにあたり障害となっている消費者の意識に焦点を当てたものはまだ少ない。フェアトレードコーヒーの周知を阻む障害は何かについて、特に消費者啓蒙や消費者教育との観点から、また、主としてフェアトレードを普及させる側の論理と実践という視点から論じたものである。日本においてフェアトレードを進める側から見た消費者の社会的責任の考え方について明らかにした上で、それが消費者の側からも納得いくものとするためには何をなすべきかについて考察を試みた。本論文は、国際文化学研究科修士課程の研究をもとに、その後に行ったイギリスでのフェアトレードに関するフィールドワークからの考察を加えたものである。