慢性疾患患者の療養生活においては、仕事の継続困難や人間関係の崩れなど失うものが大きく、看護の視点は治療から患者のもつ不確かさへとシフトしている。本研究では、金正の示した身体不動性患者の病気体験の不確かさを参考に学生の擬似体験後の質問紙調査とレポート分析を行った。擬似体験は「コントロール感覚を取り戻せない」「他者に表出する気持ちの減退」という直接的な不確かさは体験可能だが、「今の生活状態でいることの揺らぎ」「生を問う手応えのなさ」という長期療養生活における体験は困難であることが明らかとなった。身体不動性患者のケアは、患者の状態の支援など精神的なものや残存機能に着目することなど多く学んでいた。患者の持つ不確かさを慢性期看護に活かすためには,疾患に限定することなく症状を中心とした擬似体験も必要である。