Bulletin of Sanyo-Onoda City University Issue 4
published_at 2021-03-31
決定論的な理論にしたがっていても初期値鋭敏性により将来が予測できないような現象をカオスと呼ぶ。自然界にはカオス性を持った現象が多く存在する。
古典系では、初期条件がわずかに異なる粒子の軌跡が時間変化とともに指数関数的に離れていくとき、その指数(リャプノフ指数)をカオス性の特徴づけとして用いる。しかし、古典力学においてカオス性を示す系を量子力学によって扱うと、通常のカオス性の特徴付けが不可能になる場合がある。これは量子系において軌跡という概念が使えなくなることに起因する。
近年、軌跡を用いない、量子系でのカオス性の特徴付けの方法として、非時間順序積と呼ばれる物理量が注目されている。この量の時間変化を見ると、その指数増大に対する指数として古典系でのリャプノフ指数に対応する量が得られるという主張があるが、古典系でカオス性を示さない系でリャプノフ指数が有限となる場合や、古典系でカオス性を示す系で指数増大が生じない場合があるという指摘がある。
本稿では古典系でカオス性を示さない1次元系のセットアップで非時間順序積を解析し、この場合におけるリャプノフ指数の計算を行う。古典力学ではこの系はカオス性を持たないが、非時間順序積には指数増大が見られた。
Creator Keywords
quantum chaos
out of time-ordered correlators
one dimensional system
量子カオス
非時間順序積
1次元系