ゴルトンに遡る優生学は、第一次世界大戦後のナショナリズムの高揚とともに欧米諸国で広まっていった。とりわけドイツの優生政策はわが国の優生学に影響を与えた。ドイツの優生学(民族衛生)は、遺伝精神医学的な研究と取り組み既に国際的な名声を獲得していた精神医学者の協力で、1933年の強制断種法の制定へと発展していった。この法の主たる犠牲者は精神病患者と精神薄弱者であった。 それに対して、わが国の精神医学者は1940年の優生立法になんら決定的な役割を果たしていない。概して立法に対する彼らの態度は否定的なものであ