東亜大学紀要

Back to Top

東亜大学紀要 Volume 2
published_at 2004-06-25

Primary Conditions of Economic Development in Korea and Taiwan

韓国、台湾における経済開発の初期条件
OKUMA Hikaru
fulltext
1.81 MB
EA20002000002.pdf
Descriptions
韓国、台湾における経済開発の初期条件をみると、そこには明らかな同質性と異質性が混在する。冷戦構造の最前線に位置した極度の国際緊張の中で軍事独裁の政治体制を敷きつつ、いずれもが国家主導型の経済開発体制を築いた。これらは韓、台のもつ大枠の同質性である。しかし、国家主導のあり方は韓国では朴正煕の直接統治型開発方式となり、台湾では蒋介石の間接統治型開発方式を生み出すことになった。これらは、それぞれのもつ初期条件と保有する社会背景から生まれた「韓国方式」であり「台湾方式」といわざるをえない。初期条件の違いは、第1次開発計画における政策目標の違いとなって明確に分かれた。韓国は生産資本も社会資本もほとんど無の状態から出発し、「絶対的貧困」という初期条件のなかで経済開発を開始した。「絶対的貧困の悪循環の是正」が開発政策の理念になった。台湾は生産資本と社会資本がそれなりに具備された状態で開発計画を開姶した。台湾人と外省人との政治、経済、社会的二重構造のなかで、孫文の民生思想を根底においた「自給と自立」のための経済開発になった。これらの初期条件について(1)資本蓄積資金の調達、(2)高度技術の導入と開発、(3)労働力の確保、(4)市場の確保、の4つの視点から問題を捉え、さらに日本統治時代の施策のおよぼした影響についても率直に検討した。これらの初期条件はその後の経済開発計画に大筋の方向性を決めるほどの影響をおよぼす。一方、土地政策、近代的貨幣制度、教育制度、或いはこれらに関連する社会制度など日本統治時代のインフラは、韓、台の経済開発の初期条件形成に大きく影響した。また、日本語という共通言語が日本からの技術移転や技術習得を円滑にする上で少なからずのメリットとなった事実も否めない。これらに対し、是は是、非は非とする客観的議論のますます増えることが期待される。