フェライト球状黒鉛鋳鉄の無切欠き試験片を用いて様々な温度で動的曲げ試験を行った。計装化したシャルピー衝撃試験機を使用して得られた曲げ荷重-時間曲線を荷重-たわみ曲線に変換した。室温での最大曲げ荷重は21N,たわみは5.6mmであった。試験片の表面ひずみの値は主に荷重点で最大であり,室温では約30%であった。本論文ではこの最大ひずみと温度との関係を検討した。ひずみは温度に対して高温側ではほぼ一定であり,温度が下がるにつれて減少したが,210~240Kの範囲で急激に減少した。ひずみの温度に対する変化は吸収エネルギーの変化とよく対応した。ひずみeと温度Tの関係は関数 log(e)/((e_0)-e)=aT+b で表現できた。ただし,e_0はひずみの高温側での飽和値であり,aとbは定数である。シャルピー衝撃試験と静的曲げ試験を比べて,この材料ではひずみ速度を10倍増加するごとにひずみ-温度曲線が8.8Kだけ高温側に移動することがわかたった。