Abstract : 対話一般にも通底することとして、哲学対話においても近年、ルールが場の安全性=セーフティにとって大きな意味を
もつという理解が一般的なものになっている。本稿では筆者の実践の迷いを端緒としながら、対話のセーフティに貢献するルール
以外の要因としてツールを使うという視点を射程にふくめることで、この見解を再考することを目指す。ルールは規範としてだれ
もが守るものであり、比較的容易にその場の共通認識を作ることができるのに対し、ツールはこれを使うことで対話において参加
者が意識すべき態度を形成する。ルールを守るによってセーフな環境を実現するというアプローチは、セーファースペース・ポリ
シーのような対話外部の規範も視野に入れることでその意義を増す一方で、この観点のみでは日本の実践が多かれ少なかれ影響と
受けてきたハワイp4c のセーフティにとって重要な要素であるコミュニティでの継続的な実践という点を見落とすことにつながり
かねない。ハワイp4c では実際にさまざまな探究のためのツールが活用されてきたことをふまえ検討を進めることで、セーフなコ
ミュニティが成熟していくために、ルール以上にツールがより有効に機能しているのではないかという仮説が導かれる。