宇部工業高等専門学校研究報告

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宇部工業高等専門学校研究報告 Volume 57
published_at 201103

Some Considerations on Shoeki ANDO's Critical Theory of Saints

安藤昌益の聖人批判論
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UN20057000009.pdf
Descriptions
宝暦二(一七五二)年頃に完成された『統道真伝』は、『自然真営道』と並ぶ安藤昌益の代表的な著作であり、「糺聖失」「糺仏失」「人倫巻」「禽獣巻」「万国巻」の五分冊から成り立っている。小論は、その第一冊をなす「糺聖失」を考察の対象にした。
 目次に、「聖失ヲ糺ス下ニ自然ノ真道自リ見ハル 儒失ノ部」とあるように、儒教を中心に諸子百家を次々と批判しながら、伝統イデオロギーの誤りを「糺ス」ことに重点が置かれている。そして、徹底して聖人の欺瞞に満ちたベールを引き剥がすことによって、現実の封建的な権力・権威を論破せんとしており、長らく「門外不出」、「開けて読むと目がつぶれる謀反の書」という伝承があったほどのものである(1)。