種類博士論文
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背景:経食道心エコー図検査(TEE)は、心房細動(AF)に対する肺静脈隔離術(PVI)前の左心房(LA)および左心耳(LAA)における血栓の有無の評価を行うゴールドスタンダードな検査である。TEEは比較的安全とされているが、近年PVIに先行するTEEが食道粘膜損傷(EMI)を引き起こす可能性があることが報告された。 目的:PVIを施行したAF患者におけるTEE関連EMIの発生率とその危険因子を検討すること。 方法と結果:3D TEEプローブを用いた術前TEEと術後上部消化管内視鏡検査を受けたPVI患者262人を対象とした。TEE関連EMIは16人(6.1%)の患者(18病変)、PVI関連EMIは5人(1.9%)の患者(8病変)で認められた。TEE関連EMIは上部食道の右側と中部食道の左前側で多く認められた。1人の患者で軽度の胸部違和感を認めた。多変量解析では、高齢はTEE関連EMIの独立した危険因子であった(オッズ比1.08、95%信頼区間1.01-1.16;P=0.0274)。 結語:3D TEEプローブによるTEE関連EMIは、PVI施行患者の6.1%で認められ、高齢であることはTEE関連EMIの危険因子であった。これらの所見から、特に高齢患者においては、LA・LAAにおける血栓評価として他の画像診断を考慮する必要があるかもしれない。
作成者 : 小室 あゆみ
近年、遺伝子改変T細胞を用いた養子免疫療法の臨床応用が進められているが、未だ治療成績は満足のいくものではなく、更なる治療の進歩が求められている。我々はこれまで、自律性にIL7とCCL19を発現するCAR-T細胞(7×19 CAT-R細胞)が優れた抗腫瘍活性を発揮することを示した。本研究ではIL7及びCCL19がTCR-T細胞の抗腫瘍活性を増強させる可能性を検証するため、腫瘍抗原であるP1Aを特異的に認識するTCR-T細胞(P1A-T細胞)にIL7及びCCL19を分泌させる遺伝子改変を加えた7×19 P1A-T細胞を作製した。P1Aを有する細胞株であるP815を皮下接種したマウスに対する養子免疫療法において、7×19 P1A細胞はIL7及びCCL19を分泌しないP1A-T細胞(Conv. P1A-T細胞)と比較し優れた抗腫瘍効果を示した。腫瘍拒絶マウスにおいては、Conv. P1A-T細胞を使用したマウスと比較し優れた免疫記憶が形成されていた。また抗PD-1抗体を用いた複合免疫療法を行うことで、7×19 P1A-T細胞の有する抗腫瘍効果は更に増強された。CRISPR/ Cas9システムを用いPdcd1をknockdownした7×19 P1A-T細胞は対照7×19 P1A-T細胞と比較し強い抗腫瘍効果を示したが、抗PD-1抗体を併用することで更なる抗腫瘍効果の増強を認めたことから、7×19 P1A-T細胞の発揮する抗腫瘍効果には7×19 P1A-T細胞そのものばかりでなくマウス内在性のT細胞が関与していることが分かった。また、7×19 P1A-T細胞においても抗PD-1抗体との併用により抗腫瘍効果が増強することを確認した。本研究における検証により、7×19 TCR-T細胞及び7×19 CAR-T細胞を用いた免疫療法が抗悪性腫瘍療法の発展に寄与できる可能性が示された。
作成者 : 德永 良洋
地殻変動が活発な領域であり大地震がしばしば発生することで知られるひずみ集中帯では,活断層の平均変位速度の合計(長期的変位速度)と測地観測によって得られる変形レート(短期的ひずみ速度)は一致しない.このような違いはひずみパラドックス問題と呼ばれ,地殻変形に関する第一級の未解決問題である.これまでの地殻変動モデルでは,主要活断層の変形に基づいて説明されるが,ひずみ集中帯には小規模断層も認められている.本博士論文の目的は,小規模断層に着目することでひずみパラドックス問題を解決し,地殻変動の新たな描像を提案することにある.この目的を達成するため,国内の代表的な2つのひずみ集中帯(新潟-神戸ひずみ集中帯と山陰ひずみ集中帯)を対象とし,地形・地質学的研究を行った.結果として,ひずみ集中帯の一般像,それぞれの起源と形成過程,小規模断層を含めた地殻変形メカニズムを解明した.主な成果は次のとおりである. (1)新潟-神戸ひずみ集中帯では,ENE-WSW~NE-SW走向で数mm~数十cm幅の右横ずれセンスを示す小規模断層が発達しており,主要活断層の周辺や離れた場所に分布する.また,5m幅の断層コアを有する活断層を新たに発見した.本活断層はひずみ集中帯の方向に調和的な走向を持ち,AD1521-1658以降に右横ずれ運動が生じたと考えられる.この活動は明らかに新潟-神戸ひずみ集中帯の右横ずれ変形に寄与する.これら断層の起源は後期白亜紀の引張性クラックであると考えられ,その後の活動を繰り返しながら現在はひずみ集中帯の右横ずれ変形を担っていると考えられる.主要活断層から離れた地域の断層もひずみ集中帯の変形に寄与すると考えられるが,ひずみ集中帯の外側では左横ずれセンスを示し,ひずみ集中帯の変形には参加しない. (2)山陰ひずみ集中帯では,数mm~数十cm幅の小規模断層が発達しており,主要活断層の周辺や離れた場所に分布する.山陰ひずみ集中帯の小規模断層は,NW-SE~NNW-SSE走向で高角傾斜の左横ずれセンスないし,E-W走向で高角傾斜の右横ずれセンスを有する傾向が認められる.本地域でもひずみ集中帯の走向に調和的な活断層を新たに発見した.断層コアは厚さ数cmであり,18648-16313cal. BC以降の右横ずれ逆断層運動が生じたと考えられる.山陰ひずみ集中帯における主要活断層は新生代火山岩の貫入境界を利用してその骨格が準備され,活動を繰り返すことで成長したと考えられる.主要活断層だけでなく,そこから離れた地域の断層もひずみ集中帯の右横ずれ変形に寄与すると考えられるが,ひずみ集中帯の外側では逆断層運動を示す断層のみが認められた. (3)両ひずみ集中帯の小規模断層は,主要活断層から離れたものも含まれ,右横ずれ変形に寄与する姿勢・運動センスを有する.一方で,両ひずみ集中帯の外側に位置する小規模断層は,その姿勢や運動センスからひずみ集中帯の変形に寄与していない.したがって,ひずみ集中帯の内外には明確な違いがあり,ひずみ集中帯の変形階層構造は次のように想定される:(I)主要活断層の断層コア,(II)主要活断層のダメージゾーン,(III)脆性せん断帯(活動的な背景領域;ダメージゾーンの外側かつひずみ集中帯の内側),(IV)非活動的な背景領域(ひずみ集中帯の外側).このような地殻変形モデルを導入することで,ひずみパラドックス問題を解決に導くことができるだろう.一方,各々の断層の産状はひずみ集中帯によって異なる.新潟-神戸ひずみ集中帯では,ENE-WSW~NE-SW走向で数mm~数十cm幅の断層ガウジ帯を特徴とするが,中には数mにも及ぶ断層コアを有する活断層も認められる.山陰ひずみ集中帯では,NW-SE走向ないしE-W走向高角傾斜で数mm~数十cm幅の断層ガウジ帯を特徴とする.活断層露頭も認められるが数mに及ぶ断層コアはほとんど認められない.これら断層の産状的違いは各地で発達した既存の弱面に規制されて断層が配置され,断層沿いで固有の活動を繰り返すことで成長し現在に至ったと考えられる.このように,地域の局所的な地質学的背景に応じて各断層が配置され・成長し,結果としてひずみ集中帯の右横ずれ変形に寄与していると考えられる. 本研究は小規模断層の変形を考慮することで,ひずみ集中帯の一般的な変形モデルや発達過程,ひずみパラドックス問題の解決案を提示し,地殻変形の描像を刷新するに至った.本成果は,地殻の変形モデリングや測地観測結果の解釈に制約を与えるとともに,大型構造物の建設や地域の地震防災の面でも貢献すると期待される.
作成者 : 田村 友識
This PhD thesis addressed current knowledge gaps regarding microplastic pollution as well as developed new insights into occurrences and fate of microplastics within marine and freshwater systems,prominent sources-to-sinks phenomena,and ecological risk assessments with global relevance.
作成者 : KABIR A.H.M. ENAMUL
近年,情報通信技術の進化は著しく,データ主導型社会への転換が進むなか,公共データの活用促進,すなわち「オープンデータ」の動きが世界的に広がっている.わが国でも2012年には「電子行政オープンデータ戦略」が政府決定され,オープンデータが本格的にスタートした.オープンデータは,単なる情報公開にとどまるものではなく,公共データを二次利用可能な形(機械判読に適したデータ形式,無償,再配布可能等)で民間に開放することにより,データがこれまで以上の価値を生み出すことを狙うものである. 災害対策,土木・建築事業,ヘルスケア分野など,様々な分野でオープンデータの活用が始まっており,実際に公共の利益に資する例やビジネスの収益をもたらす例などを,確認することができる.しかし,オープンデータに取り組んでいる地方公共団体は未だ100%には至っていない.また,行政が掲げているオープンデータに取り組む意義・目的のすべてが達成されているとは言い難い状況にある. そこで本論文では,研究の対象主体を地方公共団体に定め,わが国のオープンデータを取り巻く生態系(エコシステム)について仮説を立て,実証実験を行い,地方公共団体のオープンデータ推進を阻む問題点と解決方法を明らかにすることを主たる研究目的とする.そのうえで,オープンデータの付加価値向上の検討を次の目的とする.具体的には,公開されている公共データを情報・ナレッジにまで加工し公表することで,地域社会の課題解決に貢献できるか検討することを目指す. これらの目的を遂行するために,本論文は次の3つのテーマに取り組む.(1)全国の地方公共団体のオープンデータ取り組みの実態を明らかにし,そこに潜む課題を明確にする.(2)わが国のオープンデータの生態系に登場する,データ提供者,サービス利用者,インフラ提供者などのアクター間の関係を包括的に考察し,地方公共団体がオープンデータを推進するための新たなモデルを提案する.(3)地域活性化にかかわる政策の,提言・評価に直接役立つように「データを情報に変換する」という試みを通じて,オープンデータ活用の更なる可能性を論じる. 本論文の主要な成果は以下の通りである.地方公共団体のオープンデータ推進の実態解明では,市区町村レベルで当該取り組みを促進するには自治体間の連携が重要であることを明らかにし,自治体間連携には3つのタイプがあることを示した.次に,総務省が実施したアンケート調査を自治体の人口規模別に分析することにより,市町村レベルで推進が進まない要因を明らかにした.また,既存のホームページによるデータ公開と,新たなオープンデータによるデータ公開が混在する現状を整理し,そこに潜む課題を明確にした.以上の結果を踏まえたうえで,オープンデータ・エコシステムという枠組みで現状をモデル化し,新たに”データ仲介者”という活動主体での取り組み方法を提案した.そして,都道府県が公開している社会指標を研究対象に選択し,山口県庁にて実験を行い,提案するモデルの効果を実証した.最後に,公共データの一歩進んだ活用法として産業連関表を用いた経済波及効果推計法を提案し,IT産業の立地が少ない地方公共団体では経済波及効果の相当規模が域外に漏出してしまうことを明らかにした.これにより,データの持つ価値を高めて,政策評価にも応用できることを示した. 本論文は,以下の8章から成る. 第1章では,序論として研究の背景,目的および構成について記載する. 第2章では,自治体の情報化推進の歴史を概観したうえで,オープンデータについて定義や意義などを整理し,地方公共団体が直面する課題について論じる. 第3章では,上述の3つのテーマ(1)~(3)に対する先行研究について述べ,本論文が目指す点を明示する. 続く第4章から第7章が,本論文の主な研究成果になる.テーマ(1)は第4,5章に,テーマ(2)は第6章に,テーマ(3)は第7章に相当する. 第4章では,都道府県別にその管内の全市区町村のなかでオープンデータをインターネットで提供している市区町村の割合を算出し,訂正調査と組み合わせて分析した結果について述べる.市区町村のオープンデータの促進には,自治体間の連携が重要であることを明らかにし,自治体間の連携に3つのタイプがあることを示した.そのなかで,”都道府県がポータルサイトの公開機能を市区町村に提供し,その機能を利用して管内自治体が自らオープンデータをアップロードするタイプ”が最も有望であることを示した. 第5章では,より深く地方公共団体のオープンデータ推進の現状を解明する.先進自治体にインタビュー調査を実施したうえで,総務省が実施したアンケート調査結果を再分析し,自治体の人口規模の際により,オープンデータの公開状況に生じる違いについて定量的に検証した.その結果,①地方公共団体のオープンデータ推進には当該団体の人口規模が大きく関係していること,②現状では従来からのホームページサイトと,新たなオープンデータサイトが混在していて,「データの重複に伴う問題」が存在すること,の2点を明らかにした. 第6章では,オープンデータ・エコシステムの枠組みを用いて,わが国のオープンデータを取り巻く世界を描出し,新たに”データ仲介者”という活動主体を取り入れたモデルを提案した.従来,行政には専ら”データ提供者”の立場が求められてきたが,”データ仲介者”の立場を主体的に採ることで,少ないリソースでも付加価値を高めたデータを公開できることを示した.このことを山口県庁での社会指標を対象にした実験で検証した. 第7章では,情報・知識への返還を通じて公開データの価値を高め,政策の提言や評価に繋げることが可能であるかの検証を行った.具体的には,産業連関表を用いた「簡便差分法」という手法を提案し,ソフトウェア系IT企業が都市部に偏在する特徴が,地方公共団体のデジタル化投資の経済効果にどのような影響を及ぼすかを分析した.その結果,IT産業の立地が少ない地方公共団体では,経済波及効果の相当規模が域外に漏出してしまうことを明らかにした.この情報は政策評価に繋がる可能性を持つ. 最後に,第8章で,本論文の総括として,各章の成果をまとめ,今後の課題を論じた.
作成者 : 中村 英人