キーワードRegenerative medicine
検索結果 1 件
ラットで食道縫合モデルを作製し、他家積層線維芽細胞シートを移植することで縫合部の創傷治癒が促進するかを検証した。 積層線維芽細胞シートは過去に報告済みの方法で作製した(S. Yoshimine et al., Autologousmultilayered fibroblast sheets can reinforce bronchial stump in a rat model. Semin ThoracCardiovasc Surg 2022; 34:349-358.)。以下に簡潔に記載する。ラット(SD、8週齢)の口腔内組織を採取し、コラゲナーゼ処理により線維芽細胞を単離した。6日間の培養後、24-well plateに線維芽細胞を5.0×105 cells/2mL/well で播種した。翌日に培地交換を行い、更に2日間培養することで積層線維芽細胞シートを作製した。積層線維芽細胞シートは組織学的に20-30μm の厚さで、4-5層の線維芽細胞で構成されていた。積層線維芽細胞シート作製時の培養上清の成長因子をELISA解析することで、積層線維芽細胞シートからVEGF やHGF、TGF-β1、TIMP-1が分泌されていることを確認した。 食道縫合モデルはラット(Wistar/ST、10週齢)の食道を切離し、4点結節縫合による再吻合を行うことで作製した。コントロール群(食道の切離/縫合のみ)と他家積層線維芽細胞シート移植群(食道の切離/縫合後、他家積層線維芽細胞シートを前壁/後壁に1枚ずつ計2枚移植)に分け、移植直後、移植後3日目、移植後5日目に犠牲死させ、縫合部の耐圧能や縫合不全率を評価した。また、縫合部の組織学的解析(Azan染色、CD31免疫染色、CD3免疫染色)および遺伝子発現解析(qPCR解析:collagen I 型/III 型、VEGF、MMP-2、TIMP-1)を行った。 移植後5 日目において縫合部の耐圧能は、コントロール群と比較して、他家積層線維芽細胞シート移植群で有意に高値だった(251.3 mmHg vs. 164.6 mmHg, p = 0.014)。縫合不全率は、コントロール群と比較して、他家積層線維芽細胞シート群で低率であったが、有意差は認めなかった(1/12 (8.3%) vs. 5/12 (41.6%), p = 0.15)。組織学的解析では、コントロール群と比較して、他家積層線維芽細胞シート移植群でAzan染色陽性の範囲が広く、縫合部でのコラーゲン量の増加が示された(p = 0.018)。また、他家積層線維芽細胞シート群では、CD31陽性の範囲が広く、縫合部での血管新生が示唆されたが、コントロール群と比較したところ、有意差は認めなかった(p = 0.08)。縫合部の遺伝子発現解析では、移植後5日目において、コントロール群と比較したところ、他家積層線維芽細胞シート移植群でcollagen I 型/III 型のmRNA発現が増加していた(p = 0.049, p = 0.042)。また、移植直後において、他家積層線維芽細胞シート移植群では、VEGF、MMP-2、TIMP-1のmRNA発現が増加していた(p = 0.013, p < 0.001, p < 0.001)。 GFP発現ラット(SD-Tg、8週齢)から作製した他家積層線維芽細胞シートをラット食道縫合モデル(Wistar/ST)に移植したところ、移植後3日目から7日目までは、GFP陽性細胞が確認できたが、移植後10日目には確認できなかった。また、移植後5日目において、コントロール群と比較したところ、他家積層線維芽細胞シート移植群での縫合部におけるCD3陽性細胞の有意な増加は観察されなかったことから、移植後5日目までは過剰な免疫応答は誘導されていないと考えられた(p = 0.75)。 ラット食道縫合モデルでは、他家積層線維芽細胞シート移植によって縫合部の耐圧能が上昇した。また、他家積層線維芽細胞シートは、統計学的有意差を認めなかったものの縫合不全の発生率を低下させた。他家積層線維芽細胞シートは、縫合部のコラーゲン量の増加や血管新生によって縫合部が補強される可能性が示唆された。
作成者 : 山本 直宗